強姦の被害者が虚偽証言を告白し、再審無罪判決

2009年に当時10代の女性に性的暴行を加えたとして、強姦などで起訴され、大阪地裁で懲役12年の判決を下された男性の再審で、2015年10月16日、大阪地裁は無罪判決を言い渡した。当初、強姦などの被害を訴えた被害者の女性が、男性の弁護人に証言は嘘であったと告白したことが無罪に繋がったもので、被害者の証言を重視しがちで冤罪を生みやすい性犯罪の捜査・公判の実態が明らかになった。

今回無罪判決が下されたのは、2009年に、大阪府在住の男性が、自宅に同居していた当時10代の女性に対し、2004年と2008年に性的暴行を加えたとして強制わいせつ1件と強姦2件で起訴された事件。同年に第一審の大阪地裁で懲役12年の判決が下された。男性は一貫して否認し、弁護側も最高裁まで争ったが、2011年4月に上告が棄却されて判決が確定し、男性は服役した。

しかし、服役から約3年半経過した2014年11月、男性を告訴した女性が男性の弁護人に「被害証言は嘘であった」と告白した。男性の弁護人からの再審請求を受けた大阪地検は、当時の診療記録に「性的被害の痕跡はない」と書かれていたのを確認。同月18日に男性を釈放した。2015年8月に大阪地裁で始まった再審公判では、検察側は「虚偽を見抜けず服役を余儀なくさせた」と謝罪し、自ら無罪判決を求め、同年10月16日、大阪地裁で無罪判決が言い渡された。芦高源裁判長は言渡し時、「身に覚えのない罪で長期間にわたり自由を奪い、計り知れない苦痛を与えた。裁判官として残念に思う。」「刑事裁判を担当する一人の裁判官として、被告人の言葉に真摯に耳を傾け、十分な審理を尽くしたい。」と述べた。なお、大阪地検が上訴権の放棄を即日申し立てたため、本判決は控訴期限を待たずに無罪が確定している。

男性側は、検察側の捜査や裁判所の訴訟指揮・事実認定の不備を複数指摘しており、今後国家賠償訴訟を提起する予定という。具体的に指摘されているのは以下の点。
・ 第三者が自宅にいる状況で被害に遭ったにも関わらず、「強姦されて泣き叫んだ」とする被害者の証言は明らかに不自然なことや、被害を受けた時期について供述が変遷していると指摘したにもかかわらず、裁判所が「(供述当時)14歳の少女がありもしない強姦の事実をでっちあげることは考えにくい。」として安易に供述の信用性を認めたこと。
・ 控訴審で弁護側が被害女性の診療記録の取り寄せを求めたのに対し、検察は「存在しない」と回答していたこと。
・ 控訴審の大阪高裁も、当時の受診状況を確認するために求めた女性と母親への証人尋問を認めなかったこと。

国家賠償訴訟では、逮捕勾留期間と服役期間を合計した日数に最大で1日1万2500円を掛けた金額が国から補償金として交付される見通し。

客観的に見て、本件は、

・被害者が供述当時14歳の少女(小中学生)であり、周囲の影響を受けやすく証言能力に疑問が残る
・(すべての事件についてではないと推測される)目撃者も少女の兄であり、立場的にも年齢的にも証言能力に疑問が残る(なお、この目撃者も、男性の服役後に目撃証言が虚偽であったと弁護側に供述した)
・被害から告訴まで相当期間が空いている
・明らかな物証がない(実際には不利な証拠を検察が隠していた可能性が高いが)

といった点から、明らかに「筋の悪い」事件であった。

通常はこのような「筋の悪い」事件は不起訴とする検察側や、供述の信用性を重視して判断する裁判所が、このような一見あり得ない誤りを犯した理由は、「家庭内で60代の男性が孫娘ほどの年齢の少女を強姦した」というやや扇情的なストーリーに対し、個々の検察官・裁判官が感情的な反応をしていたことや、同じように感情的に反応した世論に配慮し、無罪を宣告しがたかったことが原因と推測される。

実際、虚偽の供述をした女性は、その理由について「母親に執拗に問い詰められたから。」と述べており、母親と男性の関係を精査するなど、供述の信用性に疑問を挟む契機は十分にあった。ところが、男性が「女性検事は最初から『許さない』と決めつけ、話にならなかった。」と述べたとおり、本来捜査・公判に影響を与えるべきでない個々の検察官・裁判官の感情がそれぞれの判断能力を鈍らせたことや、世論を考慮すれば有罪とするほかないといった結論ありきの姿勢が、本件のような不当判決を導いたものと推測できる。